12年ほど前、仲の良かった日本鞄ハンドバッグ協会の会長に見せてもらった一枚の生地スワッチ、
「これ合皮か本革か分かる？」の質問に、断面を見て、曲げたり匂いを嗅いでも正直分からなかった戸惑いを今でも覚えています。なぜなら、それまでの私は合皮は見た目にもチープで偽物と思っていたから、自分の感覚に恥ずかしくなりました。
その時、すでにプロでも判別が難しい技術からさらに10年以上経って、昔のようなチープと言われる合皮はほぼ見なくなってきたように感じます。技術は素晴らしく進化していますが、まだ「合皮=チープ」「本革の方がいい。」という認識が多いという状況に「全然伝わっていない。」と感じました。今後は、作り手として発信できる事を考え、私たちが選んだ合皮を”Artficial Leather”と名付けて伝えて行く活動を始めました。

作り手側には、誠実にモノと向き合い、学び、作り、伝える責任があり、
購入する側には、値段や言葉に惑わされずに、自分の中で少しでも正しい情報から得た
「選ぶ基準」を持ち「判断する責任」がモノに溢れた時代には大切だと考えています。